図書館の本の背には、「913.6」や「596」といった数字のラベルが貼られています。
この数字は、本の内容を0から9の10の分野に分け、さらに細かく分けていく「日本十進分類法(NDC)」にもとづいています。
書景では、出版物の傾向を調べるときにこのNDCを使います。
この記事では、NDCの仕組みと10の分類を紹介したうえで、国立国会図書館の書誌データで「2024年に出版された本はどの分類が多いのか」を数えてみます。
日本十進分類法(NDC)とは
日本十進分類法(Nippon Decimal Classification、略してNDC)は、日本の多くの図書館で使われている本の分類法です。
森清(もり・きよし)が考案し、1929年に初版が刊行されました。
現在は日本図書館協会の分類委員会が改訂を続けており、最新版は2014年に刊行された「新訂10版」です。
名前のとおり「十進法」を使うのが特徴で、1桁目で全体を10の分野に分け、桁が増えるごとに内容を10ずつ細かく分けていきます。
| 桁 | 呼び方 | 例 |
|---|---|---|
| 1桁目 | 第1次区分(類) | 9 文学 |
| 2桁目 | 第2次区分(綱) | 91 日本文学 |
| 3桁目 | 第3次区分(目) | 913 小説.物語 |
3桁より細かく分けるときは、3桁目のあとに「.」を入れて「913.6」のように書きます。
数字を見れば、その本がどの分野のどのあたりの内容なのかが分かるしくみです。
10の分類(類)
1桁目の10分類と、それぞれに含まれる主な内容は次のとおりです。
| 類 | 名称 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 0 | 総記 | 情報科学、図書館、百科事典、新聞、叢書など |
| 1 | 哲学 | 哲学、心理学、倫理学、宗教 |
| 2 | 歴史 | 日本史・世界史、伝記、地理、紀行 |
| 3 | 社会科学 | 政治、法律、経済、統計、社会、教育、民俗 |
| 4 | 自然科学 | 数学、物理学、化学、天文学、生物学、医学 |
| 5 | 技術 | 建築、機械、電気、化学工業、家政学(料理・衣服など) |
| 6 | 産業 | 農業、林業、水産業、商業、運輸、通信 |
| 7 | 芸術 | 美術、写真、工芸、音楽、演劇、スポーツ、娯楽 |
| 8 | 言語 | 日本語、英語などの各言語 |
| 9 | 文学 | 日本文学、外国文学(小説・詩・随筆など) |
名前から想像するのと少しちがう場所に入る分野もあります。
コンピュータやプログラミングを含む「情報科学」は0類の総記、心理学は1類の哲学、料理は5類の技術(家政学)、スポーツは7類の芸術です。
2024年に出た本を10分類で数えると
では、実際にはどの分類の本が多く出版されているのでしょうか。
国立国会図書館が所蔵する図書のうち、2024年に出版されたものを分類ごとに数えました。
最も多いのは7類の芸術で26,679件、NDCが付いた図書の29.0%を占めました。
2位は3類の社会科学(17,898件、19.4%)、3位は9類の文学(14,998件、16.3%)で、この3つで全体の6割を超えます。
少ないのは0類の総記(1,984件、2.1%)と8類の言語(2,183件、2.4%)でした。
芸術がこれほど多いのは、漫画や絵本が含まれているためです。
NDCでは、漫画や絵本などは7類の「726 漫画.挿絵.児童画」に入ります。
分類記号が726で始まる図書は2024年に17,909件あり、芸術の図書の67%を占めていました。
「芸術の本」と聞いて思い浮かべる美術書や写真集よりも、漫画・絵本のほうがずっと多いということです。
すべての本にNDCが付いているわけではない
この集計には、注意しておきたい点があります。
国立国会図書館の書誌データでは、すべての図書にNDCが記録されているわけではありません。
2024年に出版された図書は全体で112,862件あり、そのうちNDCが付いているのは92,126件(81.6%)でした。
上のグラフの割合は、このNDCが付いた図書の中での割合です。
NDCが付いている割合は、出版年によって大きく異なります。
1950年代に出版された図書では41.9%と半分に届かず、1990年代は59.5%、2010年代は69.9%、2020〜2024年は78.6%と、新しい本ほど付いている割合が高くなっています。
NDCが付いていない本には、どのようなものがあるのでしょうか。
国立国会図書館は、所蔵資料の整理に独自の「国立国会図書館分類表(NDLC)」も使っています。
2020年に出版された図書の一部(各月のデータの先頭200件ずつ、計2,400件)を確かめたところ、NDCがない図書の多くは、学校別の入試問題集や公務員試験の対策本、自治体や施設のパンフレットのような資料で、NDLCの分類だけが付いていました。
1975年の図書では、NDLCだけが付いた一般書のほか、分類がまったく記録されていない漫画や文庫本も見られました。
分類の付け方も、時代によって変わる
このことは、分類別の件数を長い期間で比べるときに大切になります。
たとえば「726 漫画.挿絵.児童画」の図書は、1980年出版のものが565件、2024年出版のものが17,909件で、30倍以上に増えています。
ただし、先ほど見たように、1975年の図書には分類が記録されていない漫画がありました。
この増え方には、漫画の出版が増えたことに加えて、漫画にもNDCを付けるようになったことが含まれている可能性があります。
書誌データから見える「ある分類の本が増えた・減った」という変化は、出版の変化と、記録の付け方の変化が重なったものかもしれません。
書景での分類の扱い方
書景の記事では、分類を使った集計を次のように扱います。
- 分類別の割合は「NDCが付いた図書」に占める割合として示し、その年のNDC付与率もあわせて載せます
- 長い期間を比べるときは、分類の付け方の変化が数字に影響している可能性を記事の中で説明します
- 分類はNDCの1桁目(類)を基本にし、必要に応じて3桁(目)まで細かく見ます
次の記事からは、このNDCを手がかりに、分野ごとの出版の移り変わりを調べていきます。
データの取得方法や集計の条件は、データ元についてにまとめています。
集計の条件
- 対象:国立国会図書館サーチの「国立国会図書館蔵書」のうち、資料種別が図書のもの
- 出版年:書誌に記録された出版年(西暦)
- 分類:書誌に記録されたNDCの分類記号の1桁目。「726」は分類記号が726で始まる図書の件数
- NDCが付いていない図書の例:2020年は各月、1975年は1・4・7・10月の書誌をタイトル順に先頭200件ずつ確認したもので、無作為抽出ではありません
出典
- 国立国会図書館サーチ(https://ndlsearch.ndl.go.jp/)の書誌データ(2026年10月28日取得)をもとに書景が集計・作成
- 日本図書館協会「日本十進分類法(NDC)」
